札幌スピリチュアリスト・ブログ

スピリチュアリストとして日々感じたことや、考えたこと、書籍の紹介などを徒然なるままに記します。

近代スピリチュアリズムの歴史と今日を生きる私達

「近代スピリチュアリズム百年史」を読んで

 3月に入ってから、でくのぼう出版から出されているアーネスト・トンプソン著、桑原啓善訳の「近代スピリチュアリズム百年史」を読む機会がありました。この書でいう100年とは1848年から1948年を指します。この本が書かれたのは1950年で、訳者あとがきが書かれたのは1989年、発行されたのは2011年になります。これまで断片的にはスピリチュアリズム普及会のHPやその他関連書籍の中でスピリチュアリズムの歴史に触れたものはありましたが、体系的に整理されたものとしては始めて読ませていただきました。最近今という時代をどう捉えているかについて触れることが多かったのですが、今回は時代を200年近く前にタイムスリップしてそこから今の時代に連なる系譜を読み解いてみることに致しました。この書ではスピリチュアリズム以前の時代として、2人の偉大な先覚者についても触れています。
 その一人がエマヌエル・スウェーデンボルグ(1688-1772)であり、もう一人がアンドリュー・ジャクソン・デービス(1826 - 1910)です。スウェーデンボルグについては改めて触れるまでもなく、霊の世界に関心を持つ方ならどなたでも「天国と地獄」や「霊界日記」などを紐解かれたことがあることと思います。私自身40年程前に著書に触れました。一般的に近代スピリチュアリズムの誕生は1848年のフォックス家(ハイズビル)事件を発端とした叩音現象を米国の調査委員会が認定するということから始まったとされていますが、2人の先覚者の功績も大きいといえます。アンドリュー・ジャクソン・デービスは高度な霊能も持っていましたが、1847年に出版された「自然の原理」や「自然の黙示」ではスピリチュアリズムの出現を予言しているといいます。翌年はハイズビル事件が起こったことも、この予言が見事に実現したと言えましょう。
 この書物では、その後19世紀の霊媒としてダニエル・ダグラス・ホームやヘンリー・スレイド博士、フローレンス・クック、レオノア・E・ハイパーなどを紹介しています。また科学者によるスピリチュアリズムの採用という章では、ウイリアム・クルックス卿やW・F・バレット卿などの果たした役割が書かれ、更にフレデリック・マイヤースやリチャード・ホジソン博士らによる英国心霊協会の成立と発展についても書かれています。個々の人物の業績については、情報検索すれば出て参りますが相互の人物同士の関係性や役割などの体系的な理解という意味では大変興味深く読ませていただきました。

スピリチュアリズムの思想の歴史

 後編の「スピリチュアリズム思想の歴史」では、前述のスウェーデンボルグアンドリュー・ジャクソン・デービスを始め、アラン・カルディック、ブラバツキー、ステイントン・モーゼス、ヴェイル・オーエン、W・H・エバンス、アーサー・フェインドレーの人物像や残した思想について触れています。特にこの思想に関しては、最終的にはシルバーバーチの霊訓を中心に据えて体系化されたスピリチュアリズム普及会のHPのスピリチュアリズムの思想1~4「http://www5a.biglobe.ne.jp/~spk/about_sp/index.htm」において最新の知見をもとに紹介されていますが、そこに至る経緯を知るためにはこうした過去の歴史を紐解くことも貴重な情報源になります。
 特に世界3大霊訓と言われるフランスの思想家アラン・カルディックの「霊の書」、イギリスの敬虔なクリスチャンであるステイントン・モーゼスによる「霊訓」そして、3000年程前に他界した高級霊霊媒モーリス・バーバネルを通して語られた「シルバーバーチの霊訓」が誕生した背景にはどのような思想の系譜があり、またこうしたスピリチュアリズムの運動が地上においてはどのような人物を通してまたどのような組織を通して伝えられて来たのかを深く知ることによって、今置かれている状況を客観視できるとも考えました。
 これまでの人生でいくつかの宗教的な遍歴を経てきて感じることは、何かの信念を持ったり特に宗教的な体験から信仰の世界に入った後でも、継続して今信じているものの土台となったものはどのようなものであり、それは本当に理性で納得できるのかについては追求する姿勢が重要だと感じているからです。人はこれこそ自分が求めていた教えであるとか、教義であると一旦信じてしまうとその教義を検証したり、他の思想と比較することを止めてしまうことがあります。その批判精神、真理探求の耐えざる努力こそが、私達を真理に近づけていく道だと今は確信しています。その意味でスピリチュアリストでもあった著者の故アーネスト・トンプソン氏のような立場の方は貴重な存在だと思います。

今日の混迷に満ちた時代を生きる私達

 現代に生きる私達、特に20世紀末から21世紀初頭にかけて現代人はこれまでの人類史のなかでも特別な時代を行きていると思います。特にインターネットなどの情報通信技術の進歩は、玉石混交のネットの世界がGoogleなどの検索エンジンのおかげで世界中の知識や情報がまるで図書館のように整理された形でしかも無料で手にいれることが出来、さらにテキスト情報だけでなく動的な情報にも及び、更にはSNSの進化によって世界の人々がまるで隣人であるかのように繋がり、翻訳ソフトを介して言語の壁まで越えつつあります。特に私のようにネット以前の世界を知っている者から見るとまるで幼少期はSFの世界でしか存在しなかった世界が目の前に存在しています。ただ一つ懸念してるのは、今日のデジタルネイティブの世代が、こうした恩恵を当たり前のように感じて、この恩恵を十分に活用しきれていないように感じることです。もちろん我々の世代よりも遥かに多くの知識にアクセスできる術を知っていると思いますが、それをもっと価値あることに活用していただきたいとも思います。
 そして究極的にはもはや日常生活と切り離せなくなったAIが部分的には人間の能力を超えつつあり、これまで人間が行って来た知的労働の分野にまでその活用範囲が広がりつつあるという状況です。喜ばしい面が多く、利便性を多く享受しているので、その恩恵は十分享受しているものの、一方でその急速な進歩には今日の人間の知性と霊性では制御しきれないことへの不安も広がっています。近代スピリチュアリズムの発展の歴史を振り返ると科学技術の急速な進歩によって、それまでの時代の道徳的な規範となっていたキリスト教などの既存の宗教による人工的な教義では神の存在や宇宙の根本とは何か、死後の世界はどうなっているのかという根本的な疑問には答えきれなくなり、多くの人々が唯物的な価値観に陥りそうになった時に突如霊界からの働きかけで燎原の火の如く広がってきたことがわかります。そして今日、特に20世紀の前半にアインシュタインが解き明かした相対性理論とともに発展してきた量子論によって多次元宇宙の存在が暗示される中で、これまで迷信の世界と思われてきたスピリチュアルな存在が身近な存在となりつつあります。
 こうした人類史の中でも特殊な時代に私達は生を受け、そして地上を去ってなお存在し続ける霊的世界の人々からの働きかけを知る機会にも恵まれている時代に生きています。同時に混迷に満ちた時代にも私達は生きているわけですが、これまでの常識だと考えていた土台となる価値観が崩れつつある時だからこそ、より内面の声に耳を傾けて真実の宇宙の姿、人間とは何かについて霊的真理の存在を知って多くの方々が真の幸福に至る道を見出していただきたいと心から願っています。