札幌スピリチュアリスト・ブログ

スピリチュアリストとして日々感じたことや、考えたこと、書籍の紹介などを徒然なるままに記します。

「死は存在しない―最先端量子科学が示す新たな仮説ー」を読んで

 

宇宙の究極の理論を求める過程において

 先週末から数日かけて田坂広志氏著の発行されたばかりの表題の単行本を読む機会がありました。著者は原子力工学の工学博士で理系の出身ですが、この本のタイトルが示すように唯物論者ではありません。 『読書大全』の著者でもある堀内勉氏の解説を読む機会があり、これまでも田坂氏の著作や動画に触れる機会があり、注目していた方でもあったので、本のタイトルを見てすぐに購入しました。この本に先立って、数か月前にニューヨーク州立大学理論物理学教授のミチオ・カク氏の『神の方程式ー「万物の理論」を求めて』を読んでいて「万物の理論」ー宇宙に存在するすべての力(重力、電磁力、強い核力、弱い核力)を統一し、あらゆる現象をひとまとめに表す理論について学んでいたので、強い問題意識を持って読ませていただきました。超ヒモ理論の研究者としても知られるミチオ・カク氏はこれまでSFの例え話も交えて高度な内容を魅力的にわかりやすく語るポピュラーサイエンスの著作が多いのですが、この著書の中で宇宙や物質世界についてのさまざまな知見や新しい概念・現象を、簡潔に明瞭な言葉で語っています。

 さて田坂氏は『死は存在しない』の中で「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」という理論を紹介します。一言でいうと宇宙に普遍的に存在する「量子空間」の中に「ゼロ・ポイント・フィールド」という場があり、この場に宇宙のすべての情報が波動情報として「ホログラム原理」で「記録」されているという仮説です。ホログラム原理とは、波動の「干渉」を使って波動情報を記録する原理で、これによって極めて高密度の情報記録が可能になるといいます。(角砂糖ほどの大きさの媒体に国会図書館の全蔵書が収められるほど)また記録した情報が記録する媒体のすべてに場所に保存されているために媒体の一部からも全体情報を引き出せるといいます。このホログラム原理を用いるとフィールドの一部に繋がるだけでフィールドに記録された全体情報に触れることができるといいます。そして「ゼロ・ポイント・フィールド」に繋がる情報は「量子的波動」であるため減衰が起こらず、我々が何らかの方法で「ゼロ・ポイント・フィールド」に繋がることができれば、この宇宙の過去から現在までのすべての出来事のすべての情報に触れることができるとしています。

現代人の最大の宗教となっている唯物論的科学の限界

 田坂氏が何故、こうした問題意識を持ったのか、その背景として若い頃に大病を患い藁をもすがる思いで修業しに入ったお寺でそれまでの人生観を変えるような強烈な体験をしたことがあったと思われます。田坂氏は現代においては、「科学」というものが我々の意識に最大の影響力を持つ存在となり、いわば「最大の宗教」となってしまっているといいます。その「科学」が「神秘的な現象」の存在を否定し、「死後の世界」を否定しているので、その2つを肯定している宗教とは決して交わることができないとしています。ただ我々が拠り所としている「現代の科学」も「意識」というものの本質を明確に説明できないとし、それは現代の科学が「唯物論的科学」(物質還元主義)だからと指摘します。

 その現代の科学にも、様々な限界があります。例えば脳を解剖して神経細胞の働きを仔細に調べても、それだけでは、決して「意識」や「心」や「精神」というものの本質を知ることはできません。また量子論のような極微のレベル、原子よりも遥かに小さな「素粒子」のレベルで観察するならば、日常感覚で捉える「物質」という存在が消えていくように見えます。また、素粒子の一つである「光子」が示す「粒子と波動の二重性」に見られるように光子は「物質」としてのその「位置」を計測機器によっては測定することが出来ないとしています。次にダーウィニズムの限界として、生物の進化が突然変異と自然淘汰によって起こるとするこの理論によっては、人類のような高度で複雑な生命が誕生するためには、地球の年齢である46億年を遥かに超える年月が必要になるとして、数十億年の期間で人類が誕生したことを科学は説明できないとしています。
 さらに意識の不可思議な現象として「直観」や「以心伝心」、「予感」や「予知」や「占い的中」、「シンクロ二シティ」や「コンステレーション」等をあげて、現代の科学は「説明できないものは存在しない」という立場をとるため、これらの「意識の不思議な現象」をすべて「単なる偶然」「ただの錯覚」「何かの思い込み」「一種の幻想」と捉えられることが多いとします。しかし、明確にそうではなく存在している現象も数多く発見することができるといいます。つまり科学によって説明できない現象が我々の周りには数多くあるというのです。

「科学的知性」と「宗教的叡智」が融合した「新たな文明」の誕生の予感

 著者は最終章で、今人類の現実を見れば、地球環境の破壊はとどまることを知らず、気候危機は深刻化の一途をたどり、世界中で戦争や紛争や難民が増大するだけでなく無数の人々が飢餓の危機に直面していると述べています。そしてこのような時代に真に求められているのは「新たな制度の導入」でも、「新たな政策の実施」でもないと言います。いま、最も求められているのは、「人類全体の意識の変容」であり、「人々の価値観の転換」であろうといいます。そして、そのための最も重要な課題は、永年続いてきた「宗教」と「科学」の対立に終止符を打つことであり、この二者の間に横たわる谷間に「新たな橋」をかけることだと言います。「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」を通して、著者は一つのヒントを示しており、人類が新たな文明に向かって歩みだしていく道筋を示そうとしています。

 これまで多くの科学者が目に見える現象から様々な真理を紐解き、仮説を検証する中で実験や観測によって、その仮説を再現可能なものとして確かな足場を築こうとしてきました。また歴史上多くの宗教家や哲学者や聖賢が表れて死後の世界や、神について、人間とは何かといった問いに説明しようと試みて来ました。こうした努力は決して無駄ではありませんでしたが、これまでシンプルな言葉で宇宙の真理を表現することが叶いませんでした。著者の真摯な真理探究の試みには強い共感を覚えると同時にスピリチュアリズムの視点に立てば、死後長い年月をかけて宇宙の真理に地上で理解できる限界を超えて近づいていかれた高級霊からのメッセージを曇りない純粋な目で検証していくことにより眠っていた魂が呼び起こされて、今まで見えていなかったこと、理解できないと思っていたことに気づきが生まれると感じています。科学者の追求してきた宇宙の真の姿と宗教家の目指してきた死後の世界や目には見えないが存在する霊的世界の真理が歩み寄る時が来ていると今は感じています。人間とは如何なるものか、生命とは何か、宇宙はどこから生まれてどこに行こうとしているのかという悠久の過去から問い続けてきた人類普遍の問いに対して、アプローチの仕方は違いますが、科学と宗教が相互に相補う形で近づき、田坂氏がおっしゃるように人々の意識の変容という過程を通じて融合する時が来ることを願わざるを得ません。

 地球は誕生して46億年ですが、まだアーサー・C・クラークSF小説にあるように幼年期であるという視点に立てば、人類も新たな精神文明のようやく端緒に立っているに過ぎません。田坂氏の提唱する「科学的知性」と「宗教的叡智」を融合しようとする試みは、スピリチュアリズムの示す「摂理の神」という概念とも共通する部分があり、これまでの宗教と科学の限界を乗り越える大きな飛躍の一歩ともなりうる仮説であろうと思います。是非、一読されることをお勧めします。