札幌スピリチュアリスト・ブログ

スピリチュアリストとして日々感じたことや、考えたこと、書籍の紹介などを徒然なるままに記します。

「感染症の世界史」の読後感と今人類が直面している脅威

 

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 先週末に石弘之氏著の「感染症の世界史」を購入し、先程読み終えました。読んだ動機は、今世界的な脅威として私達の日常生活にまで様々な影響を与えている新型コロナウィルスの問題について、現在進行形でのみ一喜一憂するのではなく人類史の中で俯瞰してこの問題を考えてみる必要性を感じたからです。人類は、これまでの歴史を通して、絶滅の危機も含めて何度も様々な脅威の中を生き抜いて来ました。飢餓や世界大戦、地震津波、火山の噴火などの自然災害、急激な気候変動、そして感染症の世界的流行、経済危機など様々な脅威です。筆者の石弘之氏は東京大学卒業後、朝日新聞社に入社、その後東京大学北海道大学大学院教授、ザンビア特命全権大使などを歴任し、その間アフリカ、アマゾン、ボルネオ島などで長く働きマラリヤコレラデング熱アメーバ赤痢など様々な熱帯病の洗礼を受けたといいます。半世紀の間、環境問題に取り組んで来ましたが、病気の環境史に挑戦したのが本書であるといいます。

 この本を読み終えて、私達が世界史や日本史で学んで来た表舞台の様々な出来事の背後に感染症との闘争の歴史が綴られてきたことを改めて体系的に学ぶことが出来ました。そして今私達が戦っているウィルスとの戦いは、こうした人類と微生物との戦いの延長線上にあり、これからも続けられていく戦いの過程にいるということを再確認させられました。石氏は、まえがきの中で「私たちは、過去に繰り返されてきた感染症の大流行から生き残った『幸運な先祖』の子孫である。そのうえ、上下水道の整備、医学の発達、医療施設や制度の普及、栄養の向上など、様々な対抗手段によって感染症と戦ったきた。それでも感染症は収まらない。・・人間が免疫力を高め、防疫体制を強化すれば、微生物もそれに対抗する手段を身につけてきた」と述べています。そして感染症が人類の脅威となってきたのは、農業や牧畜の発明によって定住化し過密な集落が発達し、人同士、人と家畜が密接に暮らすようになってからだといいます。

 この度の新型コロナウィルスは中国の武漢から広がりました。この本は2014年に出版されたものを2017年に加筆・修正のうえで文庫化したものですが、石氏は終章の『今後、感染症との激戦が予想される地域は?』の中でお隣の中国と、人類発祥地であるアフリカであると述べています。中国はこれまでも何度も世界を巻き込んだパンデミック震源地になってきたといいます。過去3回発生したペストの世界的流行も、繰り返し世界を巻き込んできた新型のインフルエンザも、近年急速に進歩を遂げた遺伝子の分析から中国が起源と見られるといいます。WHOとユニセフの共同調査によると中国では上水道と下水道を利用できない人口は、それぞれ3億人と7億5000万人に達するといいます。つまり公衆衛生上深刻な問題を抱えているのです。筆者は、今日の事態を数年前に予測していたと言えます。それに加えてこの度の感染拡大では、初期の段階で中国政府による情報の隠蔽があったということも指摘されています。これは私見ですが、思想や武力や権力によって人々を抑えつけようとして来たことが、今回の事態を拡大させてしまったことを多くの人々の知るところとなってしまったように思います。

 さて、私達はこうした人類の感染症との戦いの歴史を踏まえた上で今日の脅威にどのように対峙していくべきなのでしょうか?これは私自身が今最も感じることなのですが、今日本の多くの人々は自分が感染するということよりも如何に人に感染させないようにするかということに対して最も意識を持っていると思います。軽い症状でも人にうつす可能性があれば、なるべく外出を控え、一人でも感染者を減らし重篤になってしまう人を一人でも減らそうと社会全体が取り組んでいます。経済的な面や、通常の生活と比べれば不便なこともありますが、皆今の時を耐えて他の人々に苦しみを与えないように国を上げて出来るだけのことをしようと努めています。その姿を見ていて昨年の北海道胆振東部地震の直後に北海道におけるブラックアウトの時を思い出しました。あの時も人々は、パニックになることなく冷静に行動していました。それは、自分たちが日々過ごしている社会や周りの人々との信頼や共感に基づく連帯感というものだと思います。決して強制的にやらされているのでなく、自然に対処していると思うのです。

 今日本は感染症の脅威という国難にあります。これからも自然災害や、経済危機、また他国からの脅威など様々な困難が私達の前には待ち構えています。私達がこうした脅威を前にして、立ち向かっていくことが出来るとしたらそれは他者を思いやり、共感し、他者の痛みを我が事ととして感じ取ることができる利他愛に基づく人生観をしっかりと身につけることではないでしょうか。真の国力とは経済力や軍事力という目に見える力ではなく、人と人との信頼を核とした目に見えない力による強い絆なのではないでしょうか。スピリチュアリズムを学ぶ中で、私は今そのことを日々自分に言い聞かせながら多くの人々と共に戦っていきたいと感じています。これから生まれて来る子孫から『幸運な先祖』と言ってもらえるような生き方を目指して。