札幌スピリチュアリスト・ブログ

スピリチュアリストとして日々感じたことや、考えたこと、書籍の紹介などを徒然なるままに記します。

「生物と無生物のあいだ」の読後感とスピリチュアリズムの生命観(1)

f:id:tatsuf18:20190414124951j:plain

 先日書店で青山学院大学教授で分子生物学者の福岡伸一氏著「生物と無生物のあいだ」を購入し拝読しました。以前から著者の本は書店で拝見する機会はあったのですが、今回始めて読ませていただきました。最近、ゲノム解析に関して専門家の話を伺う機会があり、また先日札幌シルバーバーチ読書会でスピリチュアリズムの思想Ⅱの2章神の摂理について(3)「神の摂理(法則)による生物の創造と支配」について学ぶ機会があり、これまで物理学的な視点では、霊的真理との整合性を考察する機会はあったのですが、生物学的な視点ではあまりなかったので、興味を持ちました。ヒトゲノムの解析は2003年4月14日には完成版が公開されました。そこにはヒトの全遺伝子の99%の配列が99.99%の正確さで含まれるとされています。詳細はヒトゲノムマップ(http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/genomemap/)を参照下さい。このゲノム解析の結果は、医学や農学など様々な分野で実用化が進んでいます。

 さて、福岡教授の著書でとても興味を覚えたのはジェームズ・ワトソン、フランシス・クリックによるDNAの2重らせん構造の解明に至るドラマチックな展開の部分と本書のタイトルにもなっている生物と無生物を隔てるものについての記述でした。

 著書の中ではワトソン、クリック以外にもX線解析によってDNAの解明に大きな貢献をしたロザリンド・フランクリン量子論の誕生に多大な影響を与えた物理学者のエルヴィン・シュレジンジャー、DNAの発見者であるオズワルド・エイブリー、更には生命の“動的平衡”の概念に近づいたルドルフ・シェーンハイマーなどが登場します。

 シュレジンジャーは、著書「生命とは何か」で“すべての物理現象に押し寄せるエントロピー増大の法則に抗して、秩序を維持しうることが生命の特質である”と指摘しています。福岡氏は“エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性と構造を強化することではなく、むしろその仕組み自体を流れの中におくことなのである。つまり、流れこそが生物の内部に必然的に発生するエントロピーを排出する機能を担っていることになるのだ”と述べています。そして“生命とは動的平衡にある流れである”と定義しています。生命を構成するタンパク質は作られる際から壊されます。その中で平衡状態を維持するために相補性という法則が働いていると述べています。

 つまり無生物と生物の決定的な違いを相補性というシステムで表現しているのです。では、その相補性はどこから来るのでしょうか?本書ではこのあと更に興味深い記述が述べられているのですが、前述のスピリチュアリズムの思想Ⅱの(3)「神の摂理(法則)による生物の創造と支配」の中で“生命界は、物理法則が適用されない全く別の世界と言えます。物理法則に反する生命体の誕生という事実は、物質界と生命界との間に大きな一線が引かれていることを意味しています。”と述べられています。人類は今生命とは何かというシュレジンジャーの問いに答えを出そうと遺伝子という生命を司る最も根本的な存在の解明に迫ろうとしています。ただ、ここで一度立ち止まらなければならないのは、20世紀の物理学の偉大な発見が、核兵器を生み出したように遺伝子の組み換えや操作が可能になった今だからこそ、そのことのもっと深い意味を物質的な次元の更に奥にある霊的視野で見つめるということが求められているということでもあります。次回、この点について更に考察を深めていきたいと思います。