札幌スピリチュアリスト・ブログ

スピリチュアリストとして日々感じたことや、考えたこと、書籍の紹介などを徒然なるままに記します。

「文明は〈見えない世界〉がつくる」から見える文明の変遷とスピリチュアリズム(2)

 

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 前回松井孝典氏の著書「文明は〈見えない世界〉がつくる」の第3章の新たに出現した〈見えない世界〉の超弦理論の登場の部分まで紹介しました。理論の詳細を論じるのは、このブログの意図するところではないのでここでは避けますが、単純化して言えば現在発見されている100を超える素粒子の基本粒子は17種類なのですが、この理論によればそれは「ひも」の振動状態の違いとして見分けられているということです。「ひも」をヴァイオリンなどの楽器の弦だと考えれば、弦の振動が奏でる音色や音の高低の違いが基本粒子であるということになります。そしてこの超弦理論は、マクロな宇宙空間に当てはまる一般相対性理論とミクロな極微の世界の法則を表した量子論を一つの公式であらわすことができる大統一理論になるのではないかと言われています。

 ここまでは現代物理学の到達しつつあることの解説でした。ここから第4章「宇宙論における人間原理と文明」に至って松井氏の文明論が展開されます。我々のいる宇宙がどういった宇宙であるかが、マクロの世界においてもミクロの世界のおいても明らかになればなるほど、科学者たちはある疑問を持たざるを得なくなるといいます。「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」という疑問に対してオーストラリア生まれの数学者・宇宙論学者のハーマン・ボンディはミクロなサイズの物理量、我々のサイズの世界の物理量、宇宙の性質に関わる物理量から基本となる物理量7つを選び出しました。ここで重要なことはそこで偶然現れてきた10の40乗という数字が電磁力と重力の比、宇宙の半径と古典的な意味での電子の半径の比、宇宙の質量と陽子の質量の比を表していることを突き止めたのです。(これを「奇妙な偶然の一致」=コインシデンスといいます)これはミクロの世界の特性が、宇宙全体というマクロな世界の特性を決めていることを示しているといいます。

 ミクロとマクロ、その両方の〈見えない世界〉を記述化していく中で得られた物理を支配する定数が、この宇宙の全体像を決めるものであるとしたら我々はそれをどう捉えればいいのか。1974年にブランドン・カーターは「宇宙は(それゆえ宇宙の性質を決めている物理定数は)ある時点で観測者を創造することを見込むような性質をもっていなければならない。」と述べています。ここでは〈見えない世界〉を見ようとする、人間という観測者を生むような宇宙であるという点に、この宇宙の存在理由があるのだとしています。

 そしてもう一点興味を持ったのが、アメリカの建築家であり、思想家のバックミンスター・フラーの文明論です。1963年に発表した「宇宙船地球号の操縦マニュアル」でフラーは持続可能な文明のあり方と、そこにおける人類の果たす役割について述べています。フラーは20世紀に入って人口爆発、資源の枯渇によって宇宙船のデザイン全体に影響を及ぼす問題が発生したことにより、宇宙船の自動運行あるいは、存続が危うくなってきたといいます。地球全体を扱う操縦マニュアルを確立するためには専門化した知性(学問)を総合的に統括し、全体を考えることが必要になってきたというのです。

 何故フラーは、超物質的な宇宙に重きを置くのか。それは、この〈見えない世界〉こそが、我々が直面している文明の問題を解く鍵を握っているからだとします。超物質的な宇宙の力で物質的な宇宙をコントロールすること、これが文明の危機を回避するために唯一の道であり、我々人類の責務なのだーとフラーは主張します。さて、話が文明論になってきたところで、長くなりましたので、次回第4章「宇宙論における人間原理と文明」の解説とスピリチュアリズムの示す世界観について述べたいと思います。