【Fukushima50】が私達に問いかけるもの
2019年も、もうすぐ終わりを迎えようとしています。年末年始は私達にとって過ぎ去ろうとする1年を振り返ると共に新しい年をどのような年として迎えていくかを家族とともに、また一人の人間として深く考える貴重な時でもあります。このブログを初めてもうすぐ2年が過ぎようとしていますが、改めてこの1年を振り返ると様々な出会いや、その時々に感じたことが昨日のことのように蘇って参ります。そのような思いでいた時に、映画の予告編で福島原発の真実を伝える【Fukushima50】(フクシマフィフティ)が2020年の3月に上映されることを知りました。2011年3月11日に発生した東日本大震災は、マグニチュード9.0という世界的にも近年類を見ない規模の超巨大地震であり、この地震による大津波によって東日本全体に未曾有の被害がもたらされるとともに、10メートルを超える想定外の津波が福島第一原子力発電所を襲いました。
そして浸水により全電源を喪失した福島第一原発は最悪のシナリオとしてメルトダウンによって想像を絶する被害(最悪5000万人に被害が及ぶ)をもたらすことさえも予測される正に国家存亡の危機でありました。この時、首都圏を含む東日本全体の崩壊の危機を救ったのは政府関係者でも、企業のトップでも、国会議員でもなく当時福島第一原発の所長であった吉田昌郎氏(2013年7月9日 - 食道癌のため慶應義塾大学病院で死去)と最後まで諦めることなく壮絶な闘いを展開し海外メディアが「Fukushima50」と呼んだ名もなき現場の人々でした。この映画の原作はノンフィクションライターの門田隆将氏著の『吉田昌郎と福島第一原発』ですが、早速本も取り寄せて読むことにしました。門田氏は「はじめに」の中で、「本書は、原発の是非を問うものではない。・・私はただ何が起き、現場が何を思い、どう闘ったか、その事実だけを描きたいと思う。・・本書は、吉田昌郎という男のもと、最後まであきらめることなく、使命感と郷土愛に貫かれて壮絶な闘いを展開した人たちの物語である」と述べています。私自身最も関心を持ったのも、名もなき人々の心の軌跡でした。
小説の中身は是非皆様に読んでいただきたいのですが、スピリチュアリストとしての私がこの小説を読み、実際に東日本大震災後に宮城県の被災地を訪れた経験から今のこの時に思うことを書かせていただきます。東日本大震災は、長い日本の歴史の中でも特に自然災害という点では過去に経験したことのない大災害でした。直接の地震・津波による死者・行方不明者は1万8429人(2019年7月時点)と大変な数に上りますが、今なお5万人以上の方々が避難生活を強いられています。その最大の原因が大量の放射性物質の漏洩を伴う福島原発事故による被害となっています。ただ、この時メルトダウンによる原子炉格納容器爆発による放射能飛散という最悪の事態は回避されました。それは、この著書で記された「Fukushima50」という事故現場にいた名もなき方々の尊い犠牲精神があって私達が今も生かされているということでもあります。
今求められる先人達への感謝と利他愛の実践の道
今振り返って見ると私自身がスピリチュアリズムやシルバーバーチの霊訓に触れてそれを人生の指針とすることになったのも、この未曾有の大災害と無関係ではありませんでした。また多くの方々が生かされていることの意味、愛する方々との別れを通して死とはなにかについて考えるきっかけになったことも確かなのではないでしょうか。シルバーバーチの言葉に「我欲を捨て他人のために自分を犠牲にするほど内部の神性がより大きく発揮され、あなたの存在の目的を成就しはじめることになります。家族的情愛や恋愛が間違っていると言っているのではありません。外に向けてのより広い愛の方が上だと言っているのです。・・愛の最高の表現は己を思わず、報酬を求めず、温かすら伴わずに、全てのものを愛することができることです。その段階に至った時は神の働きと同じです」(シルバーバーチの霊訓1巻8章「愛の力」より)
「Fukushima50」に登場する名もなき人々は、未曾有の危機の中にあって愛する家族や故郷を守るために自らの生命を賭けて全電源の喪失という最悪の環境の中で、最善の結果を求めて困難に挑んで行かれました。その時彼らがどのような覚悟で、その闘いに挑んでいったかを知ることによって私達はそうした犠牲精神が今日の日本の存続と繁栄の礎となっているという事実を改めて知ることが出来ました。彼らは、自ら進んでそのような事態に直面したわけではありません。日頃は私達と変わらず日常生活を送るごく平凡な人々であったと思います。しかし、その時、その瞬間に数多くの人々の運命や未来が彼らの覚悟や行動に委ねられました。そして彼らの自己犠牲の精神と冷静な判断による行為によって多くの生命が救われました。2019年を終えるにあたって、もう一度9年近く前の出来事に思いを馳せると共に、人としてどのような内面のあり方が、最も大切なものであるかを改めて考えるきっかけにしたいと思います。皆様もどうぞ、新しい年を迎えるに際して今生かされていることへの感謝と利他の心を持って迎えられますよう祈念して今年最後のメッセージに代えさせていただきます。
※「Fukushima50」の公式サイトは以下
https://www.fukushima50.jp/