札幌スピリチュアリスト・ブログ

スピリチュアリストとして日々感じたことや、考えたこと、書籍の紹介などを徒然なるままに記します。

「生物と無生物のあいだ」の読後感とスピリチュアリズムの生命観(2)

 

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 先回のブログでは、「生物と無生物のあいだ」の読後感も含めた生命観について述べました。今回は、その後に読んだ「思考が物質に変わる時」(ドーソン・チャーチ著)で述べられている「科学が解明したフィールド共鳴の思考の力」についてレビューも含めてスピリチュアリズムの生命観について再考します。

 以前ナポレオン・ヒル博士の「思考は現実化する」やリチャード・ポー;ウィン・ウェンガー共著の「アインシュタイン・ファクター」を読んだ時にも物事の捉え方や思考方法に影響を受けたのですが、「思考が物質に変わる時」では、歴史的な事例も含めて思考の力が生み出すエネルギー・フィールドの共鳴がどのようなメカニズムで現実世界に影響を与えていくかが科学的な視点で書かれています。「思考は現実化する」は科学的な検証というよりも様々な成功した人々の人生研究に基づいて、その共通項を集めて各人がそれを取り入れていくことによって、願望を具体化していくプロセスを書いた実践書でした。「アインシュタイン・ファクター」では、「天才の兆候の一つとして、彼らは幼いときから日記や詩、友人や家族に宛てた手紙などで自分の考えや気持ちを雄弁に語る傾向があるということをあげています。さらに、これは新進の作家だけでなく、政治家や科学者など、あらゆるジャンルの”天才”に見られるものであることもわかったのです。」と書かれています。つまり天才とは、常に自分の心に生じたイメージやアイデアを温めて、それを現実世界で形にする優れた才能のある人を指すということが書かれているのです。

 私達は幼い頃から、アウトプットすることよりも、教育や学習ということを通じてその時代、時代の常識を身につけること、つまりその社会の常識と考えられているものをインプットするということには慣れていますが、自分の心の中(思考)を表に現すということに慣れていません。「思考が物質に変わる時」では第4章「エネルギーがDNA、細胞を創る」の中で、肉体の細胞は恐るべき速度で入れ替わりながら組織再生が進むようになっていると述べられ、1秒ごとに実に81万個以上に及ぶ細胞が入れ替わるという記述があります。著者のドーソン・チャーチは米国ホリステック医療協会創立者ですが、ポジティブな思考によって細胞が生き残れるエネルギー環境ができるなど細胞が再生する際に思考が分子という物質に影響を与えていると述べています。そして、私達が自分の意識を無限に高め、光輝くエネルギーを脳内に生み出すことができるようになれば、細胞はそのエネルギーを基に再生するとも述べています。

 シルバーバーチは―「霊(生命素)なくして肉体の存在はありません。肉体が存在できるのは、それ以前に霊(生命素)が存在するからです。霊(生命素)が引っ込めば肉体は崩壊し、分解し、そして死滅します」(『シルバーバーチの霊訓 霊的新時代の到来』(スピリチュアリズム普会)  p.194)と述べています。

 先回のブログで、今日の遺伝子という生命を司る最も根本的な存在について研究が進められていることは述べました。今回は、意識(思考)が生命体の細胞の再生に大きな影響を与えていることも紹介しました。人類は一歩、一歩生命の根源に近づいていることは間違いありません。ただ、それを現実社会に当てはめてみようとすると、これまでの結果の世界の分析だけでは、どうしても解明することの出来ない壁にぶつかることも事実です。

 現代科学では、まだ霊の存在証明は出来ません。ただ、地上の生命体、人間という存在についての理解が進んで行くほどに、物質化された見えている世界や存在の根源に目に見えない存在やその意志が働いていることは否定できない事実です。人類は今、霊性進化の過程においてようやくベールの彼方に隠されてきた存在が現実世界を形作っていること、そして自分の発する意識や思考が現実世界に大きな影響を与えることに気が付きつつあります。全ての人類が願われる意識レベルに到達するには、まだ多くの時間を要すると思います。ただ、その段階に一歩一歩近づいていることは間違いありません。そのことを信じて日々歩みを進めて行きたいと思います。 

 

「生物と無生物のあいだ」の読後感とスピリチュアリズムの生命観(1)

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 先日書店で青山学院大学教授で分子生物学者の福岡伸一氏著「生物と無生物のあいだ」を購入し拝読しました。以前から著者の本は書店で拝見する機会はあったのですが、今回始めて読ませていただきました。最近、ゲノム解析に関して専門家の話を伺う機会があり、また先日札幌シルバーバーチ読書会でスピリチュアリズムの思想Ⅱの2章神の摂理について(3)「神の摂理(法則)による生物の創造と支配」について学ぶ機会があり、これまで物理学的な視点では、霊的真理との整合性を考察する機会はあったのですが、生物学的な視点ではあまりなかったので、興味を持ちました。ヒトゲノムの解析は2003年4月14日には完成版が公開されました。そこにはヒトの全遺伝子の99%の配列が99.99%の正確さで含まれるとされています。詳細はヒトゲノムマップ(http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/genomemap/)を参照下さい。このゲノム解析の結果は、医学や農学など様々な分野で実用化が進んでいます。

 さて、福岡教授の著書でとても興味を覚えたのはジェームズ・ワトソン、フランシス・クリックによるDNAの2重らせん構造の解明に至るドラマチックな展開の部分と本書のタイトルにもなっている生物と無生物を隔てるものについての記述でした。

 著書の中ではワトソン、クリック以外にもX線解析によってDNAの解明に大きな貢献をしたロザリンド・フランクリン量子論の誕生に多大な影響を与えた物理学者のエルヴィン・シュレジンジャー、DNAの発見者であるオズワルド・エイブリー、更には生命の“動的平衡”の概念に近づいたルドルフ・シェーンハイマーなどが登場します。

 シュレジンジャーは、著書「生命とは何か」で“すべての物理現象に押し寄せるエントロピー増大の法則に抗して、秩序を維持しうることが生命の特質である”と指摘しています。福岡氏は“エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性と構造を強化することではなく、むしろその仕組み自体を流れの中におくことなのである。つまり、流れこそが生物の内部に必然的に発生するエントロピーを排出する機能を担っていることになるのだ”と述べています。そして“生命とは動的平衡にある流れである”と定義しています。生命を構成するタンパク質は作られる際から壊されます。その中で平衡状態を維持するために相補性という法則が働いていると述べています。

 つまり無生物と生物の決定的な違いを相補性というシステムで表現しているのです。では、その相補性はどこから来るのでしょうか?本書ではこのあと更に興味深い記述が述べられているのですが、前述のスピリチュアリズムの思想Ⅱの(3)「神の摂理(法則)による生物の創造と支配」の中で“生命界は、物理法則が適用されない全く別の世界と言えます。物理法則に反する生命体の誕生という事実は、物質界と生命界との間に大きな一線が引かれていることを意味しています。”と述べられています。人類は今生命とは何かというシュレジンジャーの問いに答えを出そうと遺伝子という生命を司る最も根本的な存在の解明に迫ろうとしています。ただ、ここで一度立ち止まらなければならないのは、20世紀の物理学の偉大な発見が、核兵器を生み出したように遺伝子の組み換えや操作が可能になった今だからこそ、そのことのもっと深い意味を物質的な次元の更に奥にある霊的視野で見つめるということが求められているということでもあります。次回、この点について更に考察を深めていきたいと思います。

 

 

 

 

今日の社会的課題の解決の道とスピリチュアリズム

 

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 今日の世界を大きな視野で眺めてみると、フィジカルな世界(物理的な空間)とデジタルな世界(サイバー空間)との関係がより密になり、情報通信技術の発展によって世界の人々の距離が一面では縮まったように感じる一方で、一人一人の人間を見るとこれまで以上に孤立を深めているように感じます。情報通信技術は人々の生活に利便性をもたらした一方で、複雑に絡み合う社会問題の解決という面ではまだまだ出来ることは限られていることが明確になってきたようにも感じます。

 英国では、孤独担当大臣という新しいポストが誕生しました。総人口6600万人の1割以上に当たる約900万人が年齢を問わず「孤独」の影響を受けているといいます。この時代の課題である「孤独」は1日たばこを15本吸うのと同じくらい、健康に害を与えると英国の「孤独委員会」は指摘しています。この委員会は、EU残留派の女性下院議員であったジョー・コックス議員が立ち上げたといいます。ジョー・コックス議員は2016年に銃撃されて死亡していますが、現在その意志を受け継いで、トレイシー・クラウチ下院議員が担当大臣に任命されています。

 日本では、現在少子・高齢化問題やそれに伴う人口減少の問題が大きくクローズアップされています。人口減少はこれまでの人口が増加することを前提とした社会システムを新しい時代に合わせたものに変革する必要性を私達に促しています。一方で高度情報化、人口減少という社会の急激な変化の中で孤立して生きづらさを感じている多くの人々の存在も浮き彫りになりつつあります。世界幸福度ランキングでも、日本は2018年は世界54位でした。若い人からお年寄りまで、多くの方々が経済的な面だけでなく急激な時代の変化の中で様々な不安を抱えて生きていることを反映しているようにも感じます。

 私自身は、ライフワークとして社会貢献活動に取り組んでまいりましたが、一人のスピリチュアリストとしてもこれまで以上に社会課題に取り組んでいくことの重要性を日々感じています。社会問題の解決手法はこれまでにも数多くありました。また多くの組織があり、それぞれの組織はそれぞれの立場で社会問題解決に関わってきたと思います。ただ、既存の組織や体制だけでは急速に世界が変化する今の時代に、その課題解決に向けた力に限界があることも確かです。

 こうした社会問題の解決の手法として今注目を集めているのはソーシャル・イノベーションという考え方です。社会問題を抱えた当事者だけでなく、その問題に関わる様々な組織の責任ある人々がその課題の奥深くに存在する本質に対する理解を共有して互いに協力しながら、連携して共に課題解決に取り組んでいく活動です。グラミン銀行を創設したバングラデシュの経済学者のムハマド・ユヌスなどもそうした活動をしている一人だと思います。

 シルバーバーチの言葉に、フランス革命アメリカの独立運動に多大な影響を与えたトマス・ペインを賞賛し「本当に宗教的な人間とは、人々を向上させるために戦い、悪を正し、障壁を打ち砕き、無知を追放し、飢えを駆逐し、スラムを根絶しなければならないと考える人のことです。人類への奉仕(サービス)のために人生を捧げることだけが、宗教的な生き方と言えるからです。」これから取り組んでいくべき課題を明確にしながら、現在行っている社会貢献活動をこうした次元にまで少しでも近づけていくことができるよう努力していく所存です。

スピリチュアリズムの系譜について(2)

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 先回に引き続き、グレース・クック著のホワイト・イーグルの教え「アメリカ大陸の太陽人たち」の訳者である加藤明氏のあとがきの内容から、重要だと思われる点を一部抜粋し、後半で私見を述べさせていただきます。

ーーー以下一部抜粋

スピリチュアリズムの特徴

 スピリチュアリズムを他の精神主義的思想と区別する最も大きな点は、人間の霊性を承認し、霊魂の死後存続を確信するだけにとらわれず、霊界の存在との交流の可能性を実証してみせたということです。霊媒を通して愛する死者と時空を越えて再会しているという実感は、単なる教説以上に強烈な印象を与えました。また霊媒を通して高級霊が述べたとされる霊信の宇宙や生命に関する秩序立った合理的な説明によっても、多くの人が人生上の疑念を晴らし、慰めを得ることができました。

 アラン・カルディック(1804~69)がまとめた霊界通信『霊の書』『霊媒の書』、ウィリアム・ステイントン・モーゼス(1839~92)がインペレーター霊団からの通信として発表した『霊訓』『続・霊訓』、モーリス・バーバネル(1902~81)がシルバーバーチ霊団から受けたとされる多くの霊示集『シルバーバーチの霊訓』はロングセラーを続けております。

スピリチュアリズムの誕生の歴史的意義

 19世紀から20世紀前半にかけて、世界各地で政変と戦乱が相次ぎました。スピリチュアリズム誕生の年、1848年以降の主な政変としては、フランスが2月革命(1848)などを経て共和国となったこと(1870)、ドイツはプロシアの3月革命(1848)などを経てドイツ帝国(1871)、ワイマール共和国(1919)、ヒトラーの独裁国(1934~45)などと変遷したこと、イタリアが革命運動(1848)を経てイタリア王国として統一されたこと(1861)、日本が王政復古して明治維新(1868)を迎えたこと、そして何よりもロシア帝国血の日曜日事件(1905)、ロシア歴の2月革命(1917)などを経てソビエト社会主義共和国連邦(1922)という共和主義国家に変わったことがあげられます。

 唯物主義の行くつく先は、常に戦乱でありました。打ち続く戦乱でかつてない戦死者を出して1848年以降の百年間と期を同じくしてスピリチュアリズムが誕生し、発展したことも宇宙を経綸する神の愛のなせる業だったに違いありません。科学者オリバー・ロッジなども、降霊会に出席して戦死した息子のレイモンドから通信を受けたと確信したことから、心霊現象の本格的な研究に入って行きました。

ーーここまで

 この後の部分は、シャーロック・ホームズの著者としても有名なアーサー・コナン・ドイル(1859~1930)について彼の関心が推理作家としての名声そのものよりも、むしろその名声による心霊主義者としての貢献にあったことが述べられています。コナン・ドイルは1918年以降『新しき啓示』を始めとする心霊書を立ち続けに発表しました。最晩年にはクック女史とホワイト・イーグルにも関心を寄せ、会う約束までしていたこと、面会日の直前に帰天しましたが、死後1931年1月27日から翌年の6月1日までの間に、ホワイト・イーグルとクック女史を通じて、人間の由来、地上生活の意味、死後の事情、霊界の様相などについてメッセージを伝えて来て、1933年『神の国の到来』と題して出版されたことが書かれています。

 その通信が届くまでの詳しい経緯とその内容は『コナン・ドイル 人類へのスーパーメッセージ』に収められていますが、この書は実際に拝読して感銘を受けました。コナン・ドイル以外にも、『シートン動物記』の著者アーネスト・トンプソン・シートン(1860~1946)は、スピリチュアリズムの普及に間接的に貢献した作家で『私の知る野生動物』のまえがきで、「・・・動物たちも人間と同じようにものを考える力があり、愛情を持っている。そして、人間と動物とは兄弟なのである」と書いていて、生涯を通して人間と動物が兄弟であることを訴えているといいます。また科学の世界ではウイリアム・クルックス(1832~1919)やオリバー・ロッジ(1851~1940)など世界的に有名な科学者による研究や賛同によりスピリチュアリズムは急速に普及していきました。

 同時代にこれだけ多くの世界的に高名な作家や科学者、また高級霊霊媒を通して偉大な啓示を人類にもたらした時期は、空前絶後です。1848年~1980年頃(クック女史やモーリス・バーバネルが他界した頃)までの時期は、高級霊界から地上人類救済のために集中的に働きかけがあった時期であり、私たちはその与えられた恩恵を如何に深く受け止め、人生の正しい意義を見出して、自らの生き方に反映させていくことが出来るかが問われていると感じます。

 これまで、札幌シルバーバーチの会では、スピリチュアリズム普及会の皆様のご指導や協力の下、主にシルバーバーチの霊訓を題材として下記のスピリチュアリズムの思想Ⅰとスピリチュアリズムの思想Ⅱの神の摂理についての箇所まで学ぶ機会を得ました。

 

www5a.biglobe.ne.jp

 現在社会は、急速な科学技術の進歩・発展によって日常生活は大変便利になり、人のクオリティ・オブ・ライフはかつてなく向上しました。しかし、人間として最も重要な霊性の向上という視点にたてば、現在の人類は、まだまだ未成熟な段階にあることは、政治経済社会の様々な事象を通してわかります。

 ただ、既に霊的真理はスピリチュアリズムの運動によって地上にもたらされました。後は、一人一人が自らの理性と霊性に基づいて、正しくその真理を理解して実践を通して成長していけるかどうかだと感じています。私自身日々の生活の中で、常にそのことを意識して無限に続く霊性進化の道を一歩一歩着実に歩んでまいりたいと思います。

 

スピリチュアリズムの系譜について(1)

 

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スピリチュアリズム世界史年表より(グレース・クック女史)

 最近、ホワイト・イーグルの教え「アメリカ大陸の太陽人たち」(グレース・クック著)を拝読し、特に訳者の加藤明氏のあとがきを読んで、改めてスピリチュアリズムの誕生と歴史的意義を考える機会がありました。今回は、この加藤氏のあとがきを参考にして私見も含めて書かせていただきます。 

ーーーーーーーー以下本文より一部抜粋

 著者のグレース・クック女史(1892~1979)はイギリス生まれの心霊主義者で、自身の指導霊であったホワイト・イーグルのメッセンジャーとして霊的真理の普及のために重大な責務を果たされた方です。1936年には、ホワイト・イーグルの教えに共鳴した人々の協力の下にホワイト・イーグルの教えを実証するホワイト・イーグル・ロッジをロンドンに開設し、ハンプシャーのニューランズにセンターを創設され、その活動は今日まで続いています。

スピリチュアリズムの誕生と発展

 霊魂の死後存続を信じる心霊主義スピリチュアリズム)は、1848年3月31日のニューヨーク州ハイズビル事件に端を発し、その後またたく間に世界の一大潮流となってゆきました。ハイズビル事件以後、その当事者であったフォックス家の姉妹(ケイト、マーガレット、リー)を初めたとした職業霊媒が輩出し、心霊実験会が各地で開催されました。イギリスでは、心霊現象の調査・収集を目的とする心霊研究協会(1882)大小の心霊主義団体が結束した心霊主義者連盟(1890)が誕生します。日本では、1923年に心霊研究家の浅野和三郎氏(1874~1937)によって心霊科学研究会が設立され、本格的な心霊研究がなされるようになります。

 ここで注目すべきなのは、1848年という年です。興味深いことにハイズビル事件と同時期にカール・マルクスフリードリヒ・エンゲルスが協同して『共産党宣言』を発表していることです。マルクスヘーゲル弁証法フォイエルバッハ機械的唯物論を受けついで、唯物弁証法唯物史観を打ち立て、人間の成長も世界の発展も物質の運動に過ぎないと主張しました。この唯物史観の出現と同時にその対極に立つ霊的な人生観、歴史観を唱えるスピリチュアリズムが出現したことは偶然の出来事だったのでしょうか?

スピリチュアリズムと同時期の精神主義運動

 1800年代には、産業革命があり交通・通信手段が発展し、唯物的な傾向が現れたことは事実ですが、スピリチュアリズムと並んで、精神主義的傾向の思想を唱える人物も多数現れました。主な人物には超絶主義者と呼ばれたエマソン(1803~82)、クリスチャン・サイエンスを創始したエディ夫人(1821~1910)、トルストイ主義として一世を風靡したトルストイ(1828~1910)、神智学を説いたブラバッキー夫人(1931~91)は、その後ルドルフ・シュタイナー人智学の土台となりました。こうした一連の思想によって神の分霊としての個人の尊厳、物質に勝る精神の優位性、信念の力、因果の法則(カルマの法則)などが力説されました。「眠れる巨人」として今なお話題の絶えないエドガー・ケイシー(1877~1945)も、少し遅れてですが、この時期に生まれています。

 これらの思想によって古代からの伝統的なキリスト教と新進の唯物思想の2つとも揺さぶりを受けることになりました。

ーーーーーーここまで

 加藤氏のあとがきを読むと、訳者ということもあってスピリチュアリズムの流れ全体にかなり造詣が深い方であることがわかります。監訳の桑原啓善氏は、近藤千雄氏より前に日本にスピリチュアリズムを伝えた先駆者でありますが、加藤氏は桑原氏の強い影響を受けてスピリチュアリストになられたと書かれています。

 1848年がカール・マルクスの「共産党宣言」が出された年で、同じ年にはハイズビル事件を契機に霊的真理が地上に降ろされるきっかけとなった年というのは何か大きな意味があるとしか思えません。グレース・クック女史は、アーサー・コナン・ドイルが他界した後に地上にメッセージを伝えた時の霊媒でもあり、生涯に亘って「ホワイト・イーグル」の教えを地上にもたらした方です。シルバーバーチ霊媒のモーリス・バーバネルとは別の意味で重大な使命を持った霊媒だと思います。ホワイト・イーグルもシルバーバーチ同様、霊界の霊媒がインディアンであるという共通点があり、また他界したのも、モーリス・バーバネルが1981年であったのに対し、グレース・クック女史は1979年で、ほぼ同時代を生きています。

 

 

 

神の摂理に対する段階的理解について

 

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 札幌シルバーバーチの読書会では、次回から神についての学習を終えて、神の摂理について学んでいきます。スピリチュアリズムでは、これまでの宗教とは神についての認識において大きく異なっております。中でも特筆すべきことは「神は摂理(法則)を通して世界を支配している」という内容です。

◯詳細は下記をご覧下さい。

(7)スピリチュアリズムが明らかにした神観のポイント/1.神について

 私自身、最初にこの内容を読んだ時、これまでの宗教との根本的な違いから戸惑うこともありました。つまり、これまでの宗教の教義では、仏教のように神についての明確な言及を避けたり、キリスト教のような一神教では、祈りを聞き届けてくれる存在(キリスト教の場合は仲保者としてのキリストという存在はありあますが)としての神というイメージが定着していたからです。人々は自分が罪を犯したと感じた時、神の前に許しを請うという意味で祈りを捧げて来ました。また日常生活で不幸を退け幸福を得たいとしてある意味で他力本願の信仰をして来ました。そうした祈りによって救われることはないことがスピリチュアリズムの神観によって明確に定義づけられたわけです。

 神は摂理(物質界、生物界、人間界、霊的世界の全てに存在する法則)を通して世界を支配されているということ、そしてそのことこそが神の公正と深い愛を表しているということを理性だけでなく感性においても得心できた時、私達は霊界人の霊性レベルに少しでも近づくことができるのだと思います。そして神の摂理を深く理解して、摂理に沿った生き方を積極的にしていくことが、真の幸福に至る道であると高級霊による霊界通信では示されています。霊的真理を知り、それを理解し実践することによって霊性に目覚め、結果として霊的成長という人生における最高の宝を獲得することによって自力で幸福を求めていくことの重要性をシルバーバーチの霊訓を始めとした高級霊の通信は示しています。

 何を信じるかということも大切ですが、それ以上に重要なことは信じた内容を如何に日常生活の中で実践できるかであると霊界通信では示されています。絶えず学びを深め、また祈りや瞑想で感性で感じ、実践を通してその真理の正しさを日々実感していくこと、その積み重ねによって得られた確信は何者によっても奪われることはなく自分の霊の心(魂といっても良いのですが)の中に刻まれていくと思います。その意味で、苦しみという体験も含めて肉体を持った私達が地上において経験することはマイナスをゼロにしたりプラスにしていくことも含めて無駄なものは一つもありません。

 霊的真理に目覚めたスピリチュアリストは生きていく上で生じてくる様々な出来事や幸・不幸と思えることも神の摂理の中で生じていることと理解し、それを克服することができる最大の武器を手にいれることができたとも言えます。

 最近、霊的真理の学びと祈り、そして実践のサイクルを繰返す中で、これまでであれば迷ってしまったことや、人間関係、心の持ち方について思い悩むことが少なくなり、常に前を向いて歩むことができるようになってきました。今後はより多くの皆様に真の幸福に至る道をお伝えし、また高級霊の地上における道具としての自覚をもって日々精進していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

「文明は〈見えない世界〉がつくる」から見える文明の変遷とスピリチュアリズム(3)

 

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 先回まで、松井孝典氏の著書「文明は〈見えない世界〉がつくる」の中から、現代人が到達しつつある世界観(相対性理論量子論等)について学んで来ました。そこでわかってきたことは、宇宙を支配している物理法則が少しでも違うものだったら現在の人間も地球も宇宙も存在しなかった可能性が高いという事実でした。

 現代科学は、これまで様々な宗教が主張してきた原因存在の「神」の存在を否定して、現実の事象を観察しそこから得られる知見を基礎にして発展してきました。理論モデルを立てて、それを実験や観察で実証することで確かだと思えることを追求してきたのです。ただ、そこで見えてきたものは追求すればするほど何も原因がないところから全て偶然に発生したり、存在することはあり得ないという結論でした。

 偶然でないとしたら「明確な目的をもった存在による知的働きかけ」が現在の宇宙や地球、そして人間と言う存在を成り立たせているということを示しています。ここでスピリチュアリズム普及会のHPの神についての部分に以下の説明があります。

(4)神認識に関するさまざまな見解と問題点/1.神について

(4)神認識に関するさまざまな見解と問題点より

「無形のエネルギーの大海から粒子が発生し、ミクロの次元を上昇するにともない一定の物体を形成していくプロセスには、「明確な目的性に基づく知的働きかけ」があるはずであるとの考えが生まれました。科学者の中には、不可分なエネルギーのパターン(大海)が宇宙全体でダイナミックな織物をなしている、との認識をする者が現れるようになりました。その織物を形成する方向性を決定しているのが、全知全能の「神」であることは言うまでもありません。」

 松井氏の著書は現在科学でわかっていることをわかりやすく整理し、現在我々が知的に理性的に理解できる世界の姿をできる範囲で忠実に表現してくれました。更にマクロからミクロに至る全てを説明できるかもしれない超弦(ひも)理論の登場は、上記の普及会のHPで書かれているように神(原因者)の存在を示唆するものと考えることができます。

 人類は、これまでの歴史を通して知性(理性)を通して目に見えるものの背後にある〈見えない法則〉を探求して来ました。そして今日我々を取り囲む世界が如何なる世界であるかをより深く理解するに至りました。量子論によれば観測者である人間の意志や観測するという行為自体が物質の究極的な単位である電子や素粒子の動きに影響を与えることまでわかってきました。そして我々が物質だと感じているものは実はその究極的な姿が実に不安定な存在(どこに存在しているかわからない)であることを突き止めました。

 ただ結論を言えば、理論的にいくら説明しようとしても、同じ現象を見ても人によって捉え方が違うように神の存在や霊的世界の存在を実証することは現在の人間には不可能です。ただこうした思考実験を通して、目に見えるものが全てであり、肉体を伴った人生が終われば全てが終わるという唯物的な価値観や、全てが偶然に発生して偶然に進化してきただけだという進化論や無神論の主張してきた考え方もその科学的な根拠を失いつつあるということです。最終的には何を信じるかということになるのですが、心の中の真実の声に従って生きるという生き方こそ、我々が目指すべき生き方なのではないでしょうか。